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InternetExplorerのサポート終了は2022年

29 May 2021

ちょっと前に、MS(Microsoft)が2022年6月15日にIE(Internet Explorer)のサポートを終了すると発表した。

ついに終わるのか、MSさんお疲れ様でした。(ていうかまだサポートされていたのか)

そしてまだ一年あるのか…という気持ちになった。

IEのレンダリングエンジンであるTrident(EdgeのIEモード)は、移行期間として2029年までサポートするらしいけど、そんなこと言ってたら結局もっと伸びることになったりしないだろうか…

自分は誰かに文句を言いたいわけではないけど、MSのIEサポートについてはいろいろ思うことがある。

現代におけるIE

かつては、かなりのシェアを占めたIEも、セキュリティのリスクがあるし対応しないサイトも多いので、今使うのはさすがに不便じゃないだろうか?

そのへんは古いブラウザなので仕方ないことだと思う。

今も敢えてIEを積極的に使用し続けたい人はあまりいないと想像するが、特に意識せず使い続けている人やいろいろ事情がある人もいるのかもしれない。

自分でIEを使う機会はほとんど無いが、仕事でIEに関わることは稀にあった。

そういう場合に

ということをできるだけ心がけるのはモラルだと思っている。

仕方ない場合はあるにしても、可能な限りそうするべきだと思うのは、IEが嫌いだからではなく、特別な理由が無い限りIEを使用しないということが、MSや公共の利益のためになると思うからだ。

Edgeへ移行して欲しいMSと根強いユーザー

IEの開発は基本的には2015年をもって停止している。

当のMSがIEの標準使用をやめてEdgeへ移行することを推奨し続けているにも関わらず、「根強いユーザー」がいるせいでMSもなかなかサポートを切れず、仕方なくセキュリティパッチを提供し続けているという状況だったように思う。

根強いユーザーとは誰なのか。

自分も、ここ数年は仕事のバグの再現確認くらいでしかIEを使ったことはない。

まず特に意識せずIEを使い続けているというユーザーは意外と居るんじゃないかと思う。そういうユーザーは自動的にEdgeリダイレクトされていくらしいので、問題ないだろう。

ここ数年IEをサポートするサイトはかなり減ってきたと思うが、社内システムとか政府系のシステムとかで、昔作られたIE専用システムに対して移行コストを支払うのを渋って、移行が進まないという話は聞いたことがある。

想像することしかできないけど、こういうのが一番大きなクラスターなのだろうか。

あとは、IEでの表示確認用や、e2eテストクライアント、BOTみたいなものによるアクセスがIEユーザーとしてカウントされているみたいな、都市伝説みたいな話もあるけど、サーバー側で区別するのは難しいので、全く無くはない話だと思う。

IEサポート終了は早いほうが良い?

個人的には、前からIEサポート終了は可能な限り早いほうが良いと思っていた。

使わないからといって、自分の都合だけで言っているのではない。

IEの延命は、それを望む「根強いユーザー企業」のためにすらならないと思っている。

自分がそんなふうに思う理由は、いくつかある。

パーキンソンの法則

人は期限付きのタスクを与えられると、そのタスクを期限いっぱいかけてやるものだ。少なくとも期限が目安になる。

2022年にサポート終了すると宣言されても、当日まで移行をしようとしないユーザーや企業はいると思う。

一方、実際にサポートが終了して困ることになれば、移行の意思決定をするしかない。それが一年早ければ、一年早く慌て始めるだけだ。

移行を始めてしまえば、いずれは完了する。

先延ばしにしても、移行の必要性が無くなるわけではない。 むしろ早くとりかかったほうが楽なんじゃないか。

ユーザーが一時的に困るとしても、サポートを延命しないと言い切ることが移行の推進力になるし、結果的にユーザーのためになるのではないかと思う。

MSのメッセージはなかなか伝わらない

WindowsXPがサポート終了する頃、MSはWindowsXPユーザーに向けた移行キャンペーンのため、「Escape from XP」という自社の旧OSをやっつけるゲームを作っていた。「早く移行してくれよ!」というメッセージを伝えたかったのだろう。

でもそういうメッセージは、本当に伝えたい人にはなかなか響かないものだ。

そういえばWindowsXPやWindows7のときもサポート終了時期は延長されたのではなかったかな。

2015年にIE後継のEdgeが登場して以降、IEは「IE11でしか利用できないレガシーシステム」のために、MSによってサポートされてきた。

2018年のMSの記事では、Edgeへの移行を推奨しつつも「IEがいつまでサポートされるかは回答できない」としていた。

レガシーをいつまでも使い続けるのをやめて欲しいというメッセージは、「根強いIEユーザー企業」には伝わっていなかったとおもう。届いても彼らは無視しただろう。

目先の移行コストを払いたくない企業には、どんなに丁寧なメッセージを伝えても、何が推奨だとか、どういう事情でサポートが続いているかとか、レガシーへ依存することによる悪影響がどうとかには興味は無い。

彼らにとっては「とりあえずまだ放置できるか」だけが問題なんじゃないだろうか。

もともと数年もの猶予があっても移行しないユーザーなのだから、実際に期限が来るまで移行しようと思わないというのも不思議ではない。

サポートが終了するまでに移行しなければ自分たちが困る。そしてそれは自分たちの責任である、ということに気づかない組織が、それを理解するとしたら、それは実際に困ったときだろう。

でもMSにとってみれば、そういった企業に嫌われたくなかったから強く言えなかったのかもしれない。

レガシーコスト

IEサポートはレガシーコストである。

一般にレガシーは遺産みたいな意味だと思うけど、ソフトウェアの文脈では主に「古くて時代遅れのもの」を悪い意味で言うときに使う。 (一応、昔は活躍したということに対するリスペクトも含むのかも?)

最新の技術が常に最良とは限らないが、古すぎるソフトウェアは一般にメンテナンスが大変だ。しかも大変な割に、得られるものは少ない。

こういうことを言うと「開発者の怠慢だー」と怒る人がいるが、困るのは開発者だけではなく、ユーザーも損をするという話だ。

(というか、相手が損をした分、自分が相対的に得をするはずだという考えは、間違っていると思う。そう考える人は少し視野を広げたほうが良いと思う。)

ユーザーとしては、同じ価格のソフトウェアなら、便利で安全でバグが少ないほうが嬉しいわけだが、開発者にとってメンテナンスが大変ということは、便利で安全でバグの少ないソフトウェアを作るために、より多くのコストがかかるということになる。

それに、古すぎるソフトウェアを使っているユーザーは、新しいソフトウェアの利便性を取りこぼしているので、その点においても相対的に損をしている。

開発元がレガシーソフトウェアをいつまでもサポートすることは、ユーザーにとってラッキーなことではない。長期的、間接的には、サポート延長を希望するユーザー企業も含めた全ユーザーに不利益があることなのだと思う。

ソフトウェア開発リソースについて

MSのEdgeは、もともとは自社製のEdgeHTMLレンダリングエンジンを持っていたが、2020年からChromiumベースとなった。

複雑化、高機能化が進んで、新規参入がかなり困難になってしまっているブラウザ界から多様性が一つ減ってしまったことになるが、こうなってしまった要因の一つには、IEのサポートやIEとの互換性維持などで開発リソースが分散して、最新の標準規格へのキャッチアップなどに手が回らなくなったということもあるのではないかなと思う。

もしそうだとしたら、Chromiumベースとなる前のEdgeが競争に負けたと言ってしまうことはフェアなんだろうか?という気持ちになる。もし「根強いIEユーザー企業」と呼んだような企業が、早い段階でEdgeへ移行した世界線があったならば、独自エンジンのEdgeがエンタープライズ用途に強いブラウザというポジションを獲得していたかもしれない。

(ChromiumベースのEdgeも良い独自機能を実装して、最近結構評判が良いのをちょいちょい観測するので、結果的には良かったのかもしれない)

開発のリソースは有限なので、古いソフトウェアのメンテナンスにコストを割かれてしまうと、新しい機能や別の製品に手が回らなくなる上に、レガシーに対するコストは、成果に結びつく効率が悪い。

MSのような影響力のある大企業がレガシーソフトウェアのサポートにコストを払うことは、多くの人にとって不利益なことだ。

あるWEBエンジニアがIE専用システムの延命をするような仕事をしたくないと言ったとき、それは単なる怠慢ではないと思う。

確かに手間がかかるだけでなく、その苦労がその後役立つ可能性が少ないというのはあるけど、そんなことより最終的に全体にとって不利益となるようなことのためにコストを割きたくないのだ。

IE専用システムを一時しのぎで延命するなら、移行のプランを立てた後にすべきだと思う。

ユーザー企業によっては「そうは言っても…」という事情はあるだろうし、移行するために企業にとって都合の良いタイミングを検討するのは当然のことだと思うけど、サポート終了いっぱいまで使い続けようというのではなく、可能な限り早く移行してあげて欲しいと思う。

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